学芸だより

「大宰帥(だざいのそち)像、ドイツへ旅立ち」

 来る7月より、ドイツ国内の二つの会場で、日本考古学の総合的な学術研究成果を紹介する特別展「日本原始古代の変革と連続展」が開催されます。これは、日本の文化庁と国際交流基金の協力のもと、ドイツ・マンハイム市のライス・エンゲルホルヌ考古学民族博物館と、ベルリン市のマルテン・グローピウス・バウを巡回して行われるもので、文化ふれあい館からも、当時の衣装を再現した「大宰帥像」(複製)が出品されることになりました。  律令制下、公務に当たる役人たちには、それぞれの身分によって身にまとう衣服の色や冠・飾りなどに厳しい決まりがありました。中でも、最も高貴な色として珍重された紫は従三位(じゅさんみ)以上に許されたもので、大宰府では帥(そち:長官)だけが身につけることのできた特別な色でした。その染料となった紫草は、九州各地で栽培されて大宰府に集められ、さらに税物として京へ運ばれていたことが、大宰府の名を記した荷札木簡が平城宮跡から出土したことによって分かっています。  諸外国との対等な外交を目指し、日本という国が形づくられてゆく時代を象徴する衣服をまとったこの像は、1200年の時空を越え、ヨーロッパの皆さんの目に、はたしてどのように映るのでしょうか。


 


当館展覧会での大宰帥像

ドイツへの船旅に向けて、丁寧に梱包される紫色の朝服