学芸だより

「太宰府の雑煮」

 お正月の楽しみのひとつにおせち料理がありますが、中でも「お雑煮」は郷土の特色をよく表す食べ物でもあります。太宰府で作られるお雑煮は、あご(トビウオ)だしに丸餅を入れたもので、一般的に博多雑煮とよばれるものです。
 まず大晦日に、焼きあごをベースに、昆布・鰹節・椎茸などでだしを取り、塩と薄口しょうゆで味を調えた「すめ(すまし汁)」を用意します。具はそれぞれの家庭の好みによって違いますが、縁起の良い奇数になるように揃えます。具の紅白かまぼこ・里芋・大根・金時人参・ごぼう・椎茸・かしわ(鶏肉)などは切って材料ごとにゆで、一人分ずつ串に刺して準備をしておきます。
 元旦の朝、温めた「すめ」の鍋に具を串ごと入れ、火が通るまで待ちます。また別の鍋では昆布を敷き、丸餅を煮てやわらかくしておきます。次に椀の中に温めた敷大根(椀に餅がこびりつかないよう、薄く切った大根を敷いたもの)を入れ、餅をのせ、具を串からはずして形良く盛り、出世魚のブリや縁起をかついだタイの切り身・カツオ菜・コブ・スルメを飾ります。最後に「すめ」をたっぷり注いで、できあがりです。
 いただく時には年末に準備しておいた「栗箸(または栗栄箸・くりはいばし)」を使います。これは丈夫な栗の木にあやかって、新しい一年を健康にすごせるように、各自がその枝を削って祈願するものです。
 またお正月のお膳には、雑煮椀の他に黒豆・酢かぶ・数の子等の小皿が添えられます。敷大根を残すと「おかわり」、全部食べると「ごちそうさま」の意味になります。