学芸だより

衣料切符って、なあに?

(衣料切符制度=昭和17年2月1日より約10年間の施行)

 戦中戦後、生活物資が不足して自由にものが買えない時代がつづきました。少ない物資を全ての国民に公平に分配するために、たとえば衣服を買う時には、現金に加えて「衣料切符」が必要となりました。衣料切符とは衣服を買う権利を切符にしたもので、年齢や性別に関係なく一人百点が一年分として配給されました。人々はその範囲で買い物をすることを求められ、他にも日常生活全般にわたってさまざまな制限がありました。
 下の「衣料切符早わかり」(写真)は、当時、三越百貨店がお客様サービスとして作ったチラシで、各衣料の点数がわかります。また、現在大量に残った衣料切符を目にすると、切符があっても品物自体が市場に出回わっていなかったことなどが推察できます。
 文化ふれあい館では、「くらしのうつりかわり展」の中で、学校団体見学の児童たちを対象に百点の衣料切符で買い物体験を行い、とうてい足りない一年分の服を、つぎ当て・リフォーム・お下がりなどで補っていたことを学びました。豊かな現代に生きる子どもたちが、当時の状況を理解するのはむずかしいことですが、物資不足の暮らしから生まれた人々の知恵と工夫を知ることは、これからの社会を生きていく上で大切な示唆となるでしょう。



『昭和20000日の全記録』より


写真左は、戦時中に衣料切符で購入された絹のハンカチです。値段が青で18銭、点数が赤で2点と記されたシールが見えますが、上の早わかり表中程の〈ハンカチ2〉という箇所と合致しています。このハンカチの寄贈者は「大分市のときわデパートに買い物に行ったが、必要な品物が売り場に全くなく、仕方なく贅沢品の絹のハンカチを買った。使う機会もなく未使用のままで今日に至った。」と話されました。