学芸だより

当館収蔵資料 手回しかき氷機

“夏氷の日”なるものをご存じですか?
 7月25日は、日本かき氷協会が定めた「夏氷の日」とのこと。かき氷の別名、夏氷を7(ナ)・2(ツー)・5(ゴ)と語呂合わせしたのだそうです。
 
 日本では氷をいつ頃から食べていたのでしょう?
 氷については、貯蔵施設である「氷室」のことが『日本書紀』『延喜式』に記載されています。長屋王邸宅跡の出土木簡でその存在が実証されたことから、少なくとも1300年以上前から宮廷では食されていたと考えられます。但し、冬の氷を氷室で保管しても夏にはごく僅かしか残っていないため、天皇は4月1日~9月末日、中宮・東宮は5月~8月、臣下は5月5日~8月末日までと、身分により食べられる期間が定められたほど貴重なものでした。ちなみに氷室とされる遺構が那珂川町や福岡市などで発見されています。

 庶民が氷を食べ始めたのはいつ頃からでしょう?
 ときは明治2年、横浜の町田房造商店が「氷水」と称して売り始めたものが元祖かき氷のようです。戦時下の昭和17年には氷が贅沢とされ、製氷組合と飲食店組合が使用廃止を決議するなど氷にとって受難の時代がありました。しかし昭和30年代に勢いよく復活し、かき氷の暖簾が盛夏の風物詩となり、氷屋さんが自転車に積んで売り歩く姿が見られました。かき氷機も一般家庭に普及し、現在に至っています。
 
 ここでは、昭和中期に活躍したかき氷機を紹介しています。暑い夏を涼しくしのげそうなデザインと彩色が施されています。子どもたちがアサガオ型のガラス器を手に、氷がシャッシャッと削られていく様子を見つめる姿が目に浮かぶようです。
 余談ですが、自動的に氷ができる冷蔵庫を古代人が見たら腰を抜かすでしょうね。 
   
                        参考文献『日本国語大辞典』『事物起源事典』