学芸だより

戒壇院の大般若(だいはんにゃ)

  戒壇院の年中行事のひとつに、7月に行われる夏の疫病除け祈願のための大般若があります。今年は6日の午前10時30分から、博多の聖福寺とその近郊の禅寺から僧侶が集まり、参詣者の健勝とその先祖供養もあわせた祈願が行われました。最大の見所は本堂の壇上で行われる転読で、折本に装丁された『大般若経』を16名の僧侶がそれぞれ片手で高く捧げ、片方の手で受け止めながら読経する様は圧巻で、災いをも追い払う勢いです。    本来600巻ある『大般若経』ですが、今では傷んだりして使用できるのは150巻ほどになってしまいました。これらの折本は、たくさんの人びとがおもいを込め寺に納めたもので、寄進者は太宰府近郊にとどまらず県外にも広がっているそうです。  前々日は大雨注意報が出され、前日も終日雨。住職がご祈祷の後に「天気の心配をしましたが、ここ20年で雨にあったのはほんの数回です。これも仏さまのお力と感謝しております。」とおっしゃるように、この日の晴れ間は、関係者の方々をはじめ寺に人が集うよう、戒壇院を支える皆さんへのめぐみなのでしょう。




▲転読する様子。
※転読とは、教典の本文読誦を省略し、要所を読むことによって全体を読むのに代えること。



▲正面には戒壇院と関係のある寺院や仏さまの名前が書かれた五色の短冊がかけられ、祈祷の後参詣者がそれぞれを持ち帰った。