学芸だより

生活伝承に見える七夕

一般的に良く知られている七夕の伝説や風習は、中国大陸の「牽牛(けんぎゅう)・織女(しゅくじょ)」の星伝説と、手芸や芸能の上達を祈願する「乞巧奠(きっこうでん)」の行事が奈良時代に日本へ入り、日本の民間に伝わる「棚機津女(たなばたつめ)」信仰と習合してできたものとされています。

棚機津女とは、神を迎えて祀るため、7月6日の夕方から7日にかけて水辺の機屋(はたや)に籠もる乙女(巫女)です。棚機津女の元を訪れた神が、7日の朝にお帰りになる際、人々が水辺で身を浄めると、一緒に災難を持ち帰ってくれるといわれています。太宰府にも、「七夕の朝に髪を洗うと美しい髪になる」という生活伝承が伝わっていますが、これも棚機津女の信仰が関係しているのでしょう。

また、この頃は稲が一年で最も生長する時期でもあります。そのため、太宰府の一部の神社では、現在も稲の出穂や台風除け、人々が夏病しないように祈願する「七夕籠り」を行うなど、七夕と農業との関わりも見ることができます。