学芸だより

鬼瓦ウォッチング

 鬼瓦はいかめしい形相で鬼の顔をしたものだけでなく、見ると思わず笑みの出るようなものや、意味を知り、なるほど!と納得するものもあります。今回は太宰府市内で目にした、そんな鬼瓦を紹介します。

はじめは、恵比寿様。梅大路近くの大駐車場から溝尻を経て天満宮の参道へ抜ける、馬場地区のお宅の屋根に使われているものです。グレーの瓦の中にオレンジ色の何かが・・・?と目をこらして見てみると、そこには恵比寿様のお顔が。以前旅館だったときの屋号「えびす屋」にちなみ十数年ほど前に選ばれたそうで今も現役。

次は松、こちらも馬場地区。参道沿いのお店で、喫茶コーナーを抜けると奥にある庭にその鬼瓦は置かれています。江戸時代から続く商家の屋号「松屋」にちなんで明治13年につくられたそうです。以前旅館だった頃には西郷隆盛も宿泊したそうで、今でも歴史に思いをはせながら名物の梅ヶ枝餅に舌鼓をうつ人々が絶えないようです。

最後は扇、通古賀地区の王城(おうぎ)神社のもの。扇の文様は神社名と、所在地の旧小字名が「扇屋敷」だったことによるものだそうです。昭和56年(1981)に神社を改築した際に役目を終えて屋根から下り、現在は通古賀公民館で保管されています。王城神社の御祭神は事代主命(えびす大神)で、毎月1日に月次(つきなみ)祭が、12月1日にはえびす大祭が行われます。

※太宰府天満宮の門前町(三条・連歌屋・馬場・大町・新町・五条の六町)では、毎年12月3日に恵比寿まつりが行われています。


大棟の端を飾る「恵比寿鬼瓦」


庭の一部としてとけ込んでいる「松の鬼瓦」


神社名と地名にちなみデザインされた「扇の鬼瓦」