学芸だより

「境内観察・KEIDAI」 観察者Aの報告

 あたりが新緑におおわれ、あちこちを散策するのに気持ちの良い季節がやってきました。
そこでおすすめなのが、「路上観察・ROJO」。これは藤森照信氏(東京大学教授)や赤瀬川原平氏(作家・画家)らが創立した「路上観察学会」の「これまで世界の誰も注目したことのない都市の中の奇妙な光景を掘り起こす」(「ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展 10回」日本館概要主旨より) という活動です。

まあ、難しいことは考えずに〈気になるものを自由に観察してみること〉と解釈し、何か探してみようと、観世音寺で観察を実行してみました。名づけて「境内観察・KEIDAI」。〈おもしろウォッチング〉開始!

早速発見、観世音寺金堂の南側になぜかモアイが...?!大きさも姿もずいぶん違いますが、思いこみで、「モアイ」(写真2)。ところが、『観世音寺大鏡』(東京美術学校編 南都七大寺大鏡発行所 1929年) を見ると、モアイの正体とおぼしきものが映っていました(写真3)。もう、おわかりですね。金堂周囲には石の柵が巡らされており、その一部が残ったものが、「モアイ」なのかもしれません。初めからわかっていた人には当たり前のことでしょうが、観察者Aにとっては写真の頃の観世音寺について調べてみよう、と思うきっかけになりました。

みなさんも、自分の気になるものを見つけてみませんか。観察は思いこみや自己満足から始まってもよいのです。