学芸だより

衣掛神社の宮座2 -注連打ち・宮座・直会-

 今回は11月号に紹介をした衣掛神社の続編で宮座の様子に迫ります。宮座は厳粛な氏神の祭りで、秋の実りを神に感謝するものです。
 まず宮座に備え、当番の氏子たちが前もって注連打ちをします。最初に清酒・するめ・昆布を戴き、注連打ち・注連掛けの行事に入ります。稲穂を差し入れた大きな注連縄をお宮と門に1本ずつ、小さな注連縄をご神木、恵比寿さま、猿田彦大神に1本ずつ作ります。大きな注連縄は男性4人がかりで作りますが、藁を継ぎ足す具合で善し悪しが決まります。(写真1) また、小さな注連縄は「縄ない」の熟練した技術が要求され、現在衣掛神社の氏子の中で作ることが出来るのは1人だけです。古い注連縄から新しいものへと掛け替えられ、調査する私たち学芸員も心機一転、新たな気分になりました。
 宮座の当日は快晴。神社入口の両脇に建てられた白い幡が (写真2) 青空を背に美しくなびいて印象的でした。神前には神饌(清酒・塩・味噌・鯛・米・野菜)を供え、その脇に菅公の掛軸と「衣掛天満宮」と書かれた書の軸を掛けます。
 神職から氏子に手渡された榊は、豊作の謝意と新たな祈りを込め、神前に捧げられます。神事が終わるとすぐに直会に入り、神職と氏子たちが供物の清酒を戴き、事務報告、祝い歌、会食と進んでいきました。直会には次年度に当番を引き継ぐ「当渡し」の意が込められており、無事来年の当番の手へと渡っていきました。当番は上組・中組・下組の3つに分けられており、1年交替となっています。かつては厳しいしきたりの中、年長者への礼節をもって進められていた宮座は昭和36年、氏子たちの中で話し合いの場が設けられ、時代の流れに添った行事内容へと再検討がなされ、現在は、老若男女問わず和やかな雰囲気で親睦を深める貴重な場となっています。 (写真3)
 なお日々のお守りは、番丁札の回ってきた氏子の家が当番となり朝に灯明・ご飯のお供え、お宮の見回り、掃除をしています。
これを機にみなさまも散策の折に衣掛神社を訪れてみませんか?



写真1


写真2


写真3