学芸だより

伝統行事に欠かせない食べ物 ~餅の話~

お正月や桃の節句、端午の節句などの年中行事や、出産、結婚、還暦といった人生儀礼に欠かせない食べ物の一つが「餅」です。日本では、古くから特別な力を持つ食べ物として、大切に扱ってきました。
     餅の持つ力について、奈良時代に記された『豊後国(現在の大分県)風土記』という地誌には次のように書かれています。土地が豊かで毎年多くの米が収穫されるある地域で、その豊かさをおごった人々が餅を弓矢の的にしたところ、餅はたちまち白い鳥になって南の方へ飛び去っていきました。すると、豊かだった土地はその年のうちに荒れ果ててしまったとあります。この伝説からも、昔の人たちが餅に霊的な力があると考えていたことが分かります。
     お正月は一年の中で最も多くの餅が食べられます。お正月の餅には、五穀豊穣と無病息災を司る歳神様(としがみさま)が宿っているとされており、太宰府でも雑煮や七草汁、ぜんざいなどに餅を入れて食べ、歳神様の力を分けてもらい1年の無事と健康を祈っていました。



太宰府のいろいろな正月料理
太宰府のいろいろな正月料理