学芸だより
伝えて行きたい風習-正月の訪問者-
正月には親類や友人など、さまざまな人が新年のあいさつに訪れます。かつては、その訪問者のなかに家々を回り、「新しい年がよい年であるように」との願いを祝いの言葉にこめて舞う芸能者の姿が見られました。この芸能者はおよそ800年前の書物に「千秋万歳(せんずまんざい)」という名で記されており、職業の一つとされていたようです。千秋万歳は後に「万歳」と称されるようになりました。
この万歳は、もともと宮中で演じられるものでした。その後、室町時代には民家を回るようになり、江戸時代になると全国各地で地名を冠にした万歳の集団が多く誕生しました。こうした万歳は、主役の太夫(たゆう)と鼓を打つ脇役の才蔵(さいぞう)の二人一組で行われるのが一般的で、太夫の舞いや歌に加え、ときに才蔵との滑稽な問答が人々の笑いを誘いました。この太夫と才蔵の掛け合いが、現在の漫才に変化したといわれています。
太宰府市域でも、戦前までは扇子を持った「サエモン」と呼ばれる人物が各家を回り、年始の祝詞を述べお礼として祝儀に餅や米を貰ったり、猿回しのめでたい歌に合わせて猿が芸を披露する姿が見られたそうです。