学芸だより
伝えて行きたい風習-ダンダラ粥-
かつて東日本を中心に全国各地で、正月15日に「小豆粥」を食べる習慣が見られました。この風習は、古代の中国大陸で行われていたもので、6世紀半ばに書かれた『荊楚(けいそ)歳時記』という書物によると、中国では正月15日に豆糜(とうび・豆の粥)や餻糜(こうじゅく・餅をのせた粥)を門戸に供え、蚕の敵となる鼠を追い払う呪(まじな)いをしていたそうです。この行事が平安時代に日本へ伝わり、宮中行事の一つとして執り行われるようになりました。その様子は『枕草子』や『土佐日記』にも書かれていますが、当時の粥は小豆や粟、胡麻、黍(きび)など七種類の穀物を入れた「七種粥(ななくさがゆ)」に餅をのせたものでした。それが時代の流れとともに、魔除けの力があると考えられていた小豆だけが残り、粥が作られるようになったようです。
太宰府市域でも、かつては正月15日の朝に小豆粥に餅を入れた「ダンダラ粥」を食べる風習があり、これを食べて一年間の無病息災を願っていました。