学芸だより
伝えて行きたい伝統行事 -二日エート-
旧暦の2月2日・8月2日に灸をすえる風習は全国各地でみられ、これを「二日灸(ふつかやいと)」といいます。筑前地方では灸のことを「エート」と言うことから、この行事を「二日エート」と呼んでいました。
この風習については、江戸時代の民間の年中行事を収録した『諸国図会年中行事大成』にも記されており、この日に灸をすえると効能が倍増したり、病気や災難からのがれることができると考えられていました。なぜ2月と8月の2日が選ばれたかについては分かっておらず、一説では、この頃が農家の仕事始めと秋の収穫時期に当たり、冬の寒さと夏の暑さによって沈滞していた生命力に、活力を与えるため灸をすえていたからだといわれています。
太宰府市域の農村部でも「二日エート」の日は、ほとんどの地区が農作業を休み、各年齢層に分かれて食事や雑談をしながら過ごしていました。また、地域によっては、餅を搗いたり、筍ご飯を炊くなど、楽しい休養の機会となっていたそうです。