学芸だより

伝えていきたい伝統行事-八朔(はっさく)-


   「八朔」とは旧暦の八月朔日(ついたち)を略した言葉で、農村などでは本格的な稲の収穫を前に豊作を祈願する祭りを行っていました。また、八朔は別名「タノミの節供(せっく)」や「タノモの節供」とも呼ばれ、主家や親戚、知人など、日頃から頼みとしている人たちへ感謝の意を込めて、収穫した田の実(初穂)を贈る風習もありました。八朔の起源については明らかになっていませんが、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』宝治元年(1247)八月一日条に、恒例として行っていた将軍への贈物を停止するという内容が書かれていることから、770年前にはすでに行われていたと考えられます。
   太宰府市域でも、昭和30年代まで稲の成長と子どもの成長を重ねて祈願する「八朔節供」が行われていました。この日は「八月一日」などと書いた短冊のほか、男の子は七福神や紙風船、バッチ、弓、矢、女の子は豆人形、手鞠、うちわなどを結んだ笹竹を軒下に立てておき、飾りを近所の子どもたちに分けていたそうです。

学芸員 長谷部真弓