学芸だより

夏の風物詩・風鈴


 家の軒先などにつるし、風が吹くとすずやかな音色で私たちに涼を感じさせる風鈴は、もとは古代中国で、竹の枝につり下げて音の鳴り方で物事の吉兆を占う「占風鐸(せんふうたく)」に使われる道具であったと言われています。これが仏教とともに日本に伝わり、寺院の屋根の四隅や塔に下げられる風鐸になりました。ガランガランと鳴る音は魔除けの意味もあったようで、この音が聞こえる範囲に住む人たちには災いが起こらないと信じられていたそうです。その後風鐸は浄土宗の開祖・法然(ほうねん)によって「風鈴(ふうれい)」と名付けられ、現在の「ふうりん」という呼び方が一般的になったといわれています。銅や鉄製のものがほとんどでしたが、江戸時代中期になるとガラス製のものが作られ、暑い夏を乗り切るための道具として広まりました。
    近年、節電への意識が高まり、電気を使わずに涼を得ることができる風鈴が再び注目されています。その音に耳を傾けながら、悠久の歴史に思いを馳せてはいかがでしょうか。


学芸員 後藤夏実