学芸だより

伝えていきたい伝統行事 ―大正月と小正月―


   お盆と並ぶ日本の二大年中行事である正月は、現在1月1日に新年を祝うのが一般的ですが、かつては1月15日頃に正月行事を行っていました。古く日本は、月の満ち欠けを目安に生活しており、年中行事の日程も満月(望月・もちづき)や新月(朔・さく)などを元にして決めていました。とくに満月の日に重要な行事を集中して行い、正月もその一つでした。
   6世紀頃になり、新月をひと月の始まり(一日・ついたち)とする中国の新たな暦が入ってくると、宮中などではこの暦を用いて1月1日を新年とするようになります。こうした暦法の導入により、宮中では1日、民間では15日に正月行事を行うなどの違いがみられるようになりました。江戸時代以降は庶民にも1日を正月とする考えが広まっていき、1月1日を「大正月」、15日を「小正月」と呼んで区別するようになりました。
   現在の太宰府でも、どんど焼き(左義長)やもぐら打ちなど、作物の豊作や厄払いを願った小正月の行事を行っている地域があります。しかし、人々の暮らしと農業との関わりが薄くなっていけば、こうした行事だけでなく、小正月そのものが忘れられてしまうかもしれません。

学芸員 長谷部真弓

 
  1月15日に食べる郷土料理「ダンダラ粥」については、学芸だよりNo.58に詳細があります。ぜひご覧ください。