学芸だより

「片山攝三写真で見る冨永朝堂展」によせて


   菅原道真と牛との間には、生まれが丑年であることをはじめ縁深いことから、太宰府天満宮の境内には「御神牛像」が複数体置かれています。その中で最も多く人目にとまるのは、参道つきあたり、宮司邸前の1体ではないでしょうか。思わず触れたくなるような柔らかくも力強い背中のラインは、宝満山の堂々たる稜線(りょうせん)と豊かな自然がイメージされています。作者は昭和の木彫界を代表する彫刻家・冨永朝堂(とみながちょうどう)。福岡市に生まれ、後半生は太宰府の地を制作の場とし、地域の芸術振興にも尽力した人物です。師・山崎朝雲(やまさきちょううん)、その師・高村光雲(たかむらこううん)と、遡(さかのぼ)れば伝統的な仏師の流れに連なる朝堂の作品からは、若き日に修行に耐え抜き体得した確かな彫技が見えてきます。
   9月23日から行う「片山攝三(かたやませつぞう)写真で見る冨永朝堂展」は、写真家・片山攝三が撮影した朝堂の作品を紹介する写真展です。一部、実物作品の展示を行うよう予定しており、御神牛像の樹脂原型も登場します。丑年の秋のお出かけに、ぜひお越しください。
(学芸員・髙松麻美)