学芸だより

収蔵品紹介―花柄家電―


    ポットに描かれた大きなポピーの模様。昭和30年代後半から50年代にかけて、食器や家電類に花柄をあしらったものが多く登場しました。当館で収蔵しているこのポットも、こうした時期に生産されたもののひとつです。
    一家団欒の場に華を添えるため、食卓が定位置の魔法瓶を花柄にして発売したところ大きな人気になり、以降、花柄模様は台所用品や家電にも広がりました。このころ金属に印刷する技術が進歩したことも、ブームの追い風になったといわれています。一時はどの家庭でも見かけましたが、次第にブームは収束し姿を消していきました。
   近年、昭和を知らない世代を中心に「昭和レトロ」人気が高まり、ポップでかわいらしく、ノスタルジックな雰囲気の花柄模様は再び注目を集めています。復刻デザインのポットも再登場するなど、令和においても私たちの生活に彩りを添えてくれています。

学芸員 後藤 夏実