太宰府と文芸

太宰府には、古くより豊かな文芸の土壌があり、当地で詠まれたか、あるいは当地へ思いを馳せて詠まれた和歌や俳句・詩などの作品が、現在に多く伝わっています。ここでは、市内に点在している、こうした作品を石に刻んだ文学碑についてご紹介します。(今後情報を追加する予定です)

沙弥満誓(しゃみまんぜい)歌碑



沙弥満誓歌碑
石碑所在地:観世音寺


【銘文】
  しらぬひ 筑紫の綿は 身につけて いまだは著ねど 暖かに見ゆ   沙弥満誓
                                                                             (『万葉集』巻3 336)
(筑紫の綿はまだ身につけて着たことはないが、暖かそうに見える。)

   蚕の繭から紡いだ真綿は、古代九州の特産品のひとつでもありました。観世音寺別当・沙弥満誓がこの歌を詠んだ奈良時代には、律令制のもと、全国各地から都へ特産品や布などの税物が納められていました。通常は直接都へ納められますが、九州だけは一度大宰府に納められ、大宰府で使用する分を差し引いて都へ送るかたちをとっていました。
   大宰府から納められる真綿は、良質なことで都でも有名だったようです。外国との交易の代価として使われたほか、のちに沙金が支払い代価として用いられるようになった際も、大宰府が持っていた真綿と沙金とを交換することが許されたという記録が残っています。
   真綿を眺めて詠んだとされるこの歌は、一説には女性を真綿に例えたものとも考えられています。




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