太宰府の民俗

太宰府市には、長い歴史の中で生まれた、多彩な物語や言い伝えが数多く残されています。しかし現在、社会状況の変化による影響などから、こうした物語が語り継がれなくなりつつあります。ここでは、古くから太宰府に伝わるさまざまな伝説についてご紹介します。


藍染川(あいぞめがわ)


  光明寺(こうみょうじ)の前を流れる藍染川は、歌枕として「伊勢物語」「後撰和歌集」「拾遺和歌集」など、多くの和歌に詠みこまれています。また、この藍染川には、能「藍染川」としても知られる、太宰府天満宮の神官と梅壺という京女との恋物語が伝わっています。
  昔、太宰府天満宮の神官が京に上った時、そこに住む梅壺という女性と恋に落ち、梅千代という子どもをもうけました。しかし、神官はしばらくして太宰府へ帰ってしまいます。残された梅壺は恋しさが募るばかり。子どものためを思って、遠く太宰府まで下ってくるのですが、そこで待っていたのは、神官の妻の意地悪な仕打ちでした。打ちひしがれた梅壺は、世をはかなんで、藍染川に身を投げて死んでしまいます。母の亡骸(なきがら)に取りすがって泣く梅千代を見つけた神官は、梅壺の遺書によって事情を知り、梅壺が生き返るよう一心に祈りました。すると、そこに天神様が現れて、梅壺を生き返らせたのです。
  今ではささやかな流れとなった藍染川ですが、川の中には「梅壺侍従蘇生の碑」が建っていて、この恋の伝説を伝えています。

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