太宰府の民俗

太宰府市には、長い歴史の中で生まれた、多彩な物語や言い伝えが数多く残されています。しかし現在、社会状況の変化による影響などから、こうした物語が語り継がれなくなりつつあります。ここでは、古くから太宰府に伝わるさまざまな伝説についてご紹介します。


梅ヶ枝餅とおばあさん(うめがえもちとおばあさん)


  太宰府の名物、「梅ヶ枝餅」は、その昔、菅原道真(すがわらのみちざね)を募うおばあさんの優しさから生まれたものです。
  平安時代、無実の罪で大宰府に左遷された道真は、ある時、刺客に襲われて近くの麹屋(こうじや)に逃げ込みました。罪を言い渡されてやってきたものをかくまえば、自分にも咎(とが)が及ぶかもしれないというのに、その家のおばあさんは、道真をもろ臼の中に隠し、その上に洗ったばかりの腰巻きをかぶせて刺客の目をごまかしたのです。
  道真の命の恩人ともいえるこのおばあさんは、その後もこっそり配所の館にいき、不自由な暮らしをする道真のお世話をしたといいます。その時、麹の飯を梅の枝に添えて差し入れたものが、今に伝わる梅ヶ枝餅の始まりとされています。
  後におばあさんは、もろ尼御前(浄妙尼・じょうみょうに)とよばれ、人々に敬われました。道真の配所の館跡といわれる榎社の背後には、浄妙尼を祀る社があります。現在でも、太宰府天満宮の祭事のうちで、最も大切な祭りである「神幸式(じんこうしき)大祭」の折に、道真の神霊(みたま)を移した神輿(みこし)が、まず浄妙尼の祠にお礼に訪れます。

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